約 2,308,039 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1506.html
リン「マスター!! マスター!!!」 亮輔「うん?リン…きょうもキャッキャウフフしたいのか…」 リン「朝から色ボケはやめてください!!(ラ○ダーキック)」 亮輔「ぐはぁ…とか冗談はおいといて。」 リン「このたび、当wikiの作品の一つの『ねここの飼い方』の同人誌版の第3冊目が冬コミにて販売決定です!!」 亮輔「そうそう、今回も無事に販売に至った訳なんだが…ふふふ」 リン「今回はなんと私たちもゲスト出演させていただいてるんですよね?」 亮輔「そうそう、うれしい限りで(涙)」 リン「泣くことはないでしょうに…」 亮輔「だって俺愛するリンが檜舞台に立つなんて開始時は思いもしなかったからw」 リン「…てれます…ハハ」 亮輔「このカワイイやつめ!」 リン「だめですマスタぁ…こんなところで…」 茉莉「ゴホンゴホンゴホン!!!!」 リン&亮輔「…失礼しました。」 茉莉「ということで、ねここのマスターこと『D☆G』さんの描く神姫ワールドを小説と挿絵で表現した同人誌、『ねここの飼い方03』は冬のコミックマーケットの3日目、31日セ-53bで販売です。」 亮輔「あとリンも売り子だしな」 リン「そうでしたぁ!! あの…すこし恥ずかしいですが表紙と同じ衣装でお待ちしていますので。もしよければお立ち寄りください。」 一同「ということで、『ねここの飼い方03』をよろしくお願いします~~~~」 ねここの飼い方 武装神姫のリン 注)尚、この文章はリンのマスターさんに書いて頂きました。 有難う御座います。
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/411.html
登録日:2012/12/01 (土) 03 29 23 更新日:2022/03/22 Tue 10 27 17 所要時間:約 4 分で読めます ▽タグ一覧 ジルリバーズ 日笠陽子 武装神姫 武装神姫 BATTLE MASTERS Mk.2 ジルリバーズとは、武装神姫BATTLE MASTERS Mk2に登場する神姫である。 素体デザインは黒星紅白が、武装デザインは柳瀬敬之が担当。 CV 日笠陽子 正式名称「クルーザー型MMSジルリバーズ」 コンセプトは「武装神姫にバイカー魂を」。 クルーザーとはヨットやボートではなく、ハーレー等のアメリカンバイクの事。 バイクとライダーにこだわりを持つ二つのブランドの共同開発から誕生したバイク型神姫。 素体はライダースーツを着込んでおり、神姫の中では比較的露出は少ない。 ただしあくまで比較的。胸元が大胆に開いており、エロ……いやワイルドでかっこいいイメージに仕上がっている。 ジルリバーズのデザインを依頼された黒星紅白が持ち込んだ所、「可愛んじゃね?」等と評判がよかったようで一発でオーケーを貰ったとか。 黒星本人も気に入っているようで、「ペロペロしたい」と、とても紳士的なコメントを残した。自重しろ。 【バトルマスターズのジルリバーズ】 入手可能になるのはF2クリア後。オフィシャルショップに相方のエストリルと同時に入荷される。 隠しキャラやDLCを除けば、最後に入荷される神姫である。 ワイルドな外見の通り性格はキツめ。 過程や方法などどうでもよく、ルール内ならばどんな手を使おうと勝てばよかろうなのだというポリシーを持つ、ダークヒーローのような性格。 しかしこれはあくまで基本性格である。 作中、孫を亡くした老婆を気遣い、老後のパートナーをしている者もいる。 中にはマスター共々強い相手には全力で媚び、格下と判断した相手は全力でなじるとんでもないのもいるが。 ちなみにこのジルリバーズはやけにハイテンションで声が高い。最早ただの日笠。 彼女はシナリオ中でも「勝利こそ全て。勝者こそが一番偉い」というスタンスである。 敗北を重ねるマスターに「貴様はクズだ」と言い放つシーンもあるため、イラッとする人もちらほらいるとか。 しかしそんな彼女も、主人公や色々なマスターとの交流やアブソリュートからの敗北等により、敗者の気持ちを考え始める。その辺りはゲームにて。 彼女の「だいちゅきだー!」を聞くだけで、余裕で一ヶ月エアパスタ生活ができると言っても過言ではない。 ごめんやっぱ過言だった。 専用RAは「ヘリッシュクレイドル」。 通称轢き逃げアタック。 武装をバイクに変形させ、高速で突撃し、後輪を浮かせて前輪を中心に敵を潰すように回転した後に跳ね飛ばす。8HIT。 変形中は無敵、攻撃中はスーパーアーマーが付くため潰されにくい上に威力も高い。追尾性能も高く、多少距離が開いていても全ヒットするため非常に使いやすい。 多少武装のハンデがあっても、ぶっぱしているだけでゴリ押しで倒せたりする。 ただしギリギリまで引き付けてからジャンプされたりターンをされたりしたら当たらない。 近接攻撃から繋げると即座に発動して轢き潰す。 強化版は「ヘリッシュクレイドルEX」。 基本は変わらないが威力が上がっている。また、×で右旋回ができるようになった。 ヘリッシュクレイドルと同じ感覚で使えるが、EXRAの仕様上ライドMAXにならないと使えないため注意。 また、専用RAに必要な武装にボディパーツはないため、専用RAに囚われる事なく強力なパーツを付けられる。カラーリング的にアイネスのパーツが似合うかもしれない。 ただし胸が隠れるため注意。 【フィギュアとしてのジルリバーズ】 ない。 大切な事なのでもう一度言う。ない。 なぜかエストリル共々未だに発売されていない。というか発売予定すらないらしい。 嘘だと思うならAmazonで「ジルリバーズ」か「エストリル」と検索してみるといい。バトマスmk2しか出ないから。 バトマスで神姫を知り、黒星バイク姉妹に惚れたマスター達は枕を濡らしたとか。 事実かは不明だが、発売予定がなくなったのはバイクに変形する武装が壊れたから、という説がある。 イベントにてジルリバーズとエストリルが紹介された時にバイクに変形する武装も一緒に紹介された。 その武装バイクは大切な物で、何かあった場合発売延期もあり得るというかなりヤバい物だった。 恐らく何かあったから発売予定がなくなったのではないだろうか。 あくまで憶測なので信じるか信じないかは貴方次第。 というかそんな大事な物を裸で持ってくるなよ……。 ……と、バイク姉妹のマスターは絶望したが、「当月」の発売予定はないという意味らしい(pixiv大百科より)。 とりあえず希望は見えた。ただ発売日は未定。バイク姉妹の明日はどっちだ。 余談だが、4Gamerの動画で「じるりん」という名前がつけられた。 らぷちー等、スタッフは何かを狙っているのだろうか? 追記・修正はジルリバーズがだいちゅきな方にお願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] コナミが神姫在庫一斉販売イベントを行った今、発売は絶望的なんだよな… -- 名無しさん (2014-04-06 09 52 02) 巷で話題のブキヤ神姫、売り上げによっちゃバイク型まで行くつもりらしい、まあソースがソースだから信憑性には欠けるが -- 名無しさん (2015-09-27 00 50 40) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/vtsr/pages/2139.html
ラジロンのうた (武装神姫RADIO RONDOより?) http //www.nicovideo.jp/watch/sm2026248 http //www.nicovideo.jp/watch/sm2026248 2008年01月13日 19 52 38 投稿 Vocaloid2のオリジナル曲 使用Vocaloidは初音ミク 製作者は武装歌劇派 一つ前のページにもどる
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2467.html
キズナのキセキ ACT0-6「異邦人誕生 その1」 ◆ あの暑い夏の日以来、『ポーラスター』には行っていない。 武装神姫の雑誌も手に取りはしなかったし、ネットで情報を集めることも、いや、ネットにつなげることさえしていない。 放課後は時間が余った。 クラスの友人たちが、男の子と一緒の集まりに誘ってくれて、一度は参加したが、気が晴れることはなかった。 二度と参加する気はなかったし、誘われることもなかった。 学校には黙々と通い、勉強したから成績も上がったが、だから何の意味があるというのだろう。 あれから三ヶ月たった。 あの暑さの面影はどこにもなく、冬の足音が聞こえてきている。 だが今も、心の傷は癒えることなく、疼き続けている。 とても大切なものを、一番大切な人に壊された。 久住菜々子は今も笑えないままでいる。 ◆ 久住頼子はため息をつき、孫の様子を眺めている。 唯一の孫であり肉親でもある久住菜々子は、自室の机に向かって宿題を黙々と片付けている。 菜々子は、中学二年の秋の様子に逆戻りしていた。 笑わなくなった。 いつもやぶにらみで、誰も信用しない。 話をするのも、クラスで仲がいい数人と、頼子くらいだった。 美貌に影を落とし、近寄りがたい雰囲気を放ち続けて、もう三ヶ月が経つ。 頼子は考えを巡らせる。 そろそろ何か手を打たなくてはならない。 高校時代は短く、しかしまばゆい輝きを放つ、かけがえのない青春の時間だ。 それをこんな風に暗い色で塗りつぶしては罰が当たろうというものである。 ここは、孫のために一肌脱ごう。 そう心を決めると、頼子は腕まくりして、肩をいからせた。 ◆ 「あなたにプレゼントがあるのよ」 「……またそのパターン?」 菜々子が呆れて、深いため息をつく。 だが、頼子には全く悪びれる様子がない。 「あらー、覚えててくれたのね」 「頼子さんのお節介に付き合ったのはあれが初めてだったから、印象深くて」 「じゃあ、わたしが何を出してくるのかも当ててみる?」 「そんなの、言うまでもないわ」 にこにこ顔の頼子に対し、菜々子はこれ以上はない仏頂面だ。 この状況で頼子さんからのプレゼントと言ったら、武装神姫以外にはあり得ない。 菜々子が落ち込んでいたこの間にも、頼子さんは飽きもせずに神姫センターにせっせと通い、ファーストリーグへと昇格していた。 菜々子は今さら神姫のオーナーになる気はなかった。 ミスティこそ、自分のただ一人の神姫だと信じていた。しかし、そのミスティはもういない。 「まあ、武装神姫なんだけど。とりあえず見なさいな」 答えは予想通り。いや、予想するまでもない、決まりきった答え。 だが、頼子さんがちゃぶ台の上に置いた箱は、菜々子の想定外だった。 「これ……見たことない」 「菜々子がしょぼくれてる間に、新発売になったのよ。新規参入、オーメストラーダ社の最新型」 汎用性の高さ故、多くのマスターたちが好んで使っている、フロントライン社のストラーフやアーンヴァルとは明らかに異質な武装。 装甲は流麗なカーブを描き、タイヤが全部で三つ装備されている。 ハイマニューバ・トライク型 イーダ……それがこの武装神姫の名前だった。 真新しい神姫を前に、興味がないと言ったら嘘になる。 どうしても止められない胸の高鳴りは、二年あまりの間、毎日培ってきた武装神姫への興味のたまものだ。 しかも、自分が知らない新製品である。 触れてみたいと思わない方がおかしい。 だが、喜んで触ってしまっては、頼子さんの思うつぼだった。 今回は、中学生の時のようには行かない。 「……いらないわ」 「……そう? 言い忘れてたのだけど」 頼子さんが不適に笑った。 「この神姫のコアは、ミスティのものに換装してあるわよ」 その一言に菜々子の心は射抜かれた。 ミスティはマグダレーナに完膚無きまでに破壊されたが、コアは比較的無事に残っていた。 だからといって、新しい神姫にそのコアを移植する気にはなれなかった。 そうこうしているうちに、このお節介な祖母が、勝手にコアを換装してしまったというのだ。 お節介にもほどがある。 そう思いながらも、菜々子は努めて平静を保ちながら、イーダの入った箱をいそいそと自室に運んだ。 頼子さんはお茶を飲みながらほくそ笑んでいたようだが、気にしないことにした。 ◆ 期待と不安を、心に入り交じらせながら、菜々子はセッティング作業を行う。 ミスティが使っていたクレイドルは、この三ヶ月の間に埃だらけになっていた。 菜々子は埃を丁寧に拭うと、箱の中からイーダ型の素体をそっと取り出し、クレイドルの上に乗せた。 紫色のロール髪が可愛らしい。 菜々子は久しぶりに少し胸を高鳴らしながら、PCから登録画面を呼び出す。 おなじみのオーナー登録。イーダ型の口から流れる声に少し戸惑う。 登録作業はスムーズに進み、ついにイーダ型が起動した。 瞳に光が宿り、ちょっと気が強そうな表情で、菜々子を見上げてくる。 「あなたがナナコね?」 「え? ……ああ、そう……だけど……」 「もっとちゃんとして、わたしのマスターなら。……はじめまして。わたしはミスティ。これからよろしくね」 菜々子は面食らった。 なんだ、この神姫は。 わたしは今さっき、確かに、オーナーの呼び方を登録したはずだ。 「ちょっと……わたしの呼び方は、マスターで登録したはずだけど」 「いいじゃない。名前で呼んだ方がフレンドリーで」 菜々子はミスティの物言いにカチンと来た。 そして、心に失望が満ちる。 この神姫はミスティじゃない。断じて、ない。 ミスティのコアを使っているとはいえ、ヘッドもAIも新調されている。おまけに別機種だから、基本の性格設定もストラーフのミスティと同じになるはずがない。 そんなことは分かっていた。 だが、菜々子には淡い期待があった もしかしたら、ただ素体が換装されただけで、正確も記憶も受け継いだミスティが起動するのではないか、と。 淡い期待は粉みじんに撃ち砕かれた。 ミスティはわたしを呼び捨てにしたりしない。 ミスティはこんな口調でしゃべったりしない。 ミスティは生意気に口答えしたりしない。 ミスティはこんな居丈高な態度をとったりしない。 「ふざけないで」 自分でも驚くほどに暗く、寒々とした口調。 そして本心をオブラートに包むことなく口にする。 「あんたがわたしの神姫だなんて……絶対に認めない」 それを聞いたミスティの両目が見開かれ、絶望に暮れた顔を見せたが、菜々子は無視した。 すると形のいい眉を釣り上げ、果敢にも、生意気にも、ミスティは言い返してきた。 「わがまま言ってんじゃないわよ! ちゃんと電子頭脳に登録されてるんですからね! オーナー登録したのはナナコだって!」 「だから、勝手に呼び捨てするなって、言ってるでしょう!」 「別にいいでしょ! わたしがそう呼びたいんだから!」 「よくない! ちゃんとマスターって呼びなさいよ!」 「ふーんだ、ナナコ、ナナコナナコ!」 「こっの……わがまま神姫!」 二人の口論は延々と続いた。 これが菜々子とイーダのミスティの出会いの夜だった。 ■ 「わたしたちは決して良好な関係で始まったわけじゃなかった。むしろ最悪だったわね。二人とも意地っ張りだから、お互いの主張は平行線で、歩み寄る様子もなかったわ」 ミスティはまた苦笑する。 いつもの自信に溢れた笑いではなくて、どこか陰のある笑い方。 「でもね……わかる? 起動してすぐ、『自分の神姫として絶対に認めない』って言われたときの気持ち……。 あれはキツかったな。起動していきなり、絶望に突き落とされた気分だった。 だから、怒りを奮い起こして、懸命にすがりついたの……ナナコに。 あの日から、わたしの戦いが始まった……初代のミスティに挑む戦いが」 もうやめて、とわたしは言いたかった。 ミスティがコアの内に秘めている過去の記録を、無理矢理聞き出しているような気分だった。 ミスティにとってつらい思い出なら、これ以上話さなくていい。話すべきじゃない。 でも、わたしは言えなかった。 ミスティはわたしを見つめながら話していたから。 わたしは彼女の話を聞かなくてはならない。親友として。その責任を果たすために、彼女の言葉のすべてを聞かなくちゃいけなかった。 ◆ 一週間ほど後、菜々子はミスティを連れて『ポーラスター』へ向かった。 気に入らないとはいえ、武装神姫を手に入れたのだ。 つまり戦う手段を再び手にした……お姉さまとその神姫に挑む手段を。 菜々子の意志は、昏い情念に燃えていた。マグダレーナを破壊し、お姉さまに復讐する。わたしと同じ気持ちを、お姉さまにも味あわせる。 そのためには、この生意気な神姫を強くしなくてはならない。たとえ気に入らない神姫であっても、今はわたしの武器だ。 「……久住ちゃん……久しぶり」 「ご無沙汰でした、花村さん」 『七星』のリーダー格である花村耕太郎は、菜々子を心から心配そうに出迎えてくれた。 「大丈夫なのかい?」 「ええ」 「……ほんとうに? 無理してないかい?」 「大丈夫ですから、今日から復帰です」 菜々子は少し苛立ちながら、言い切った。心配してくれるのはありがたいと思うが、腫れ物に触るような態度は、菜々子の望むところではない。 むしろ花村は、菜々子の態度に、さらに心配を深めていた。 菜々子は笑わない。まるで、初めて『ポーラスター』に来た頃の……『二重螺旋』を結成する前の『アイスドール』そのものだ。 笑顔が絶えなかった菜々子の心は、初めて出会った頃に逆戻りしているのではないか。 その原因が、菜々子を笑顔にしていた理由……桐島あおいなのだろうから、なおさらやりきれない。 だが、菜々子の深い絶望は、花村の想像を超えていた。 久しぶりのバトル、その第一戦から、菜々子の怒りが炸裂した。 「なにやってんの、あんた! そんな動きも出来なくて、勝てるわけないでしょうが!」 菜々子の神姫は、今話題のオーメストラーダ社の新型だ。 起動して間もないのだろう、武装もセッティングもノーマルのままであることは伺い知れる。 にもかかわらず、菜々子はかつての愛機・ストラーフのミスティ同様の戦い方を強要した。 もちろん、そんなことが出来るはずもない。 大型の副腕を持つイーダ型は、ストラーフ型と似ているから対比されることも多いが、戦い方は全く異なる。 そもそもイーダ型の副腕は独立稼働しないし、ストラーフのような頑健なレッグパーツがあるわけでもない。 イーダ型の特長は、それらを補ってあまりある、トライクの高機動性と変形機構にある。 それを生かさずして、バトルでの勝利は望めない。 しかし、菜々子は、ふがいない戦いを続ける彼女の神姫を罵り続けた。 的確な指示も出さないくせに、試合に負けたことをすべてミスティのせいにする。 ミスティはいちいち菜々子に食ってかかり、二人は激しい口論を繰り広げる。 そして、必ず最後に、 「あんたがわたしの神姫だなんて、絶対に認めない」 まるで決めゼリフのように言って、ミスティを黙らせた。 これには『ポーラスター』の常連たちも、辟易した。 自分の神姫にそんな言葉を、衆人環視の中で堂々と投げつけるなんて、ありえないことだ。 自分の神姫を虐げているとしか思えない。 今の菜々子は実に見苦しかった。 ◆ 「起動したばかりの神姫で、そんな戦い方は無茶だ。わからない久住ちゃんじゃないだろ?」 「そんな生ぬるいこと言ってちゃ、お姉さまには勝てない」 花村が諭す言葉を菜々子はまるで意に介さない。 花村の心配は的中していた。 菜々子はにこりとも笑わない。バトルスタイルは、勝利優先に逆戻りしている。 まるで初めてあった頃の菜々子のようだ、と花村は思い、いや、と首を振った。 もっとひどい。 瞳は昏い情念に燃え、心は復讐にとりつかれている。姉と慕った人を倒すことしか頭にない。 それを自らの神姫に押しつけ、痛罵する。 今の菜々子は見るに耐えない。 このままでは、次の『七星』候補などと言うことはできなくなる。 花村は呆れたように吐息をつくと、どうしたものかと思案した。 □ 「その直後だな。菜々子ちゃんが初めてこの店に来たのは」 日暮店長がミスティから話を引き継ぐ。 「花村くんが連れてきたんだ。エルゴに集まる常連さんたちはくせ者ぞろいだから、菜々子ちゃんにもいい刺激になるかも知れない、ってな」 肩をすくめて言う店長に、ミスティは苦笑した。 「まあ……それでわたしは大変な目にあったわけ。今思い出しても、我ながらよくやったと思うわ」 店長もミスティを見つめて苦笑した。 この店でも何かあったらしい。 ミスティと出会った頃の菜々子さんは相当荒んだ性格だったようだ。 さもありなん、と思わないでもないが、今の菜々子さんの姿からは想像するのが難しい。 実際、ミスティの話を頭の中で想像しようとしても、できなくて困る。 大城も同様だったようで、俺たちは二人して首をひねっていた。 ◆ その客は、あまり乗り気そうじゃない少女の手を引いて、強引に店に入ってきた。 「店長、こんにちは」 「いらっしゃい、花村くん」 ホビーショップ・エルゴの店長、日暮夏彦にしてみれば、花村耕太郎という青年が、これほどの美少女を連れてくることが驚きだった。 しかし、この上もなく不機嫌そうな表情が、美貌を台無しにしている。笑えばさぞかし魅力的だろうに。 日暮は花村に、店の奥の階段を目配せした。 彼のお目当ては、エルゴの二階、バトルロンドの対戦コーナーだ。 数日前、日暮店長は花村から電話で相談を受けた。日暮は快く、彼の相談内容の根回しを行った。 いま二階では、花村の策謀が、今や遅しと待ち構えている。 花村は日暮に軽く会釈し、菜々子を連れて、二階へと上がった。 エルゴの二階は、バトルロンドの対戦スペースとして開放されている。 『ポーラスター』に比べたら、規模は随分小さいが、それでも観戦用の大型ディスプレイや、一休みできるラウンジなどが備えられており、神姫プレイヤーにはとても居心地のいい空間に思えた。 花村と菜々子は、奥のテーブルの一つに向かい合って座る。 端から見れば、ちょっとしたデート中のカップルに見えるだろうか。 花村としては、本当はそうであれば嬉しいのだが、いかんせん、向かいに座る彼女は、これ以上ない仏頂面だった。 花村は、自販機で買ってきたジュースを菜々子に手渡す。 無言で受け取った菜々子は、それを手にしたまま、大型ディスプレイに映し出されるバトルに目を向けていた。 「どうだい、いいバトルしてるだろ?」 そう言った花村をじろりと見る。 花村は観戦用の大型ディスプレイに目を向けたまま楽しげだ。 仕方なく、菜々子もディスプレイに視線を向けた。 確かに、ぱっと見ただけでも、素晴らしい対戦ばかりが繰り広げられていることがわかる。 片目に眼帯をかけたストラーフ型は、接近戦メインかと思えば、スイッチが切り替わったかのように、精密射撃で敵を翻弄している。 同じストラーフ型でも、燐というバトルネームの神姫は、空中で華麗な機動を決めて、相手を倒す。 あるツガル型はまったくのノーマル装備だったが、実に多彩かつクレバーな戦いぶりを披露している。 ノーマルと言えば、アーンヴァル型の一人は公式武装のみのカスタムだ。マイティという彼女もまた、華麗な戦いぶりを披露している。 その相手は、ありえないほどのジェット推進装備を施しているマオチャオ型。あんなのでコントロールできるのかと思いきや、光学武装による分身攻撃さえ見せつけた。 そして、大型ディスプレイにドレスアップされたハウリンが映し出されると、周囲の観客のボルテージが上がる。相当人気の神姫なのか、観客からかけ声すら上がっていた。 この盛り上がりを、菜々子はどこか懐かしく感じた。 そう、ここのバトルのあり方こそは、わたしとお姉さまが追い求めていた理想に近い。 まだ『二重螺旋』が現役だった頃は、こんな楽しさが『ポーラスター』でも感じられた。毎日のように。 だが、菜々子はそんな感傷を振り払う。 やぶにらみのまま、花村に言った。 「試合内容がどうあれ、勝てなかったら意味ないわ」 ゴスロリドレス姿のハウリンは、次々と武器を取りだしては攻撃し、相手を翻弄する。 非武装派の神姫と見せかけて、実はバリバリ武闘派の暗器使いだったらしい。 やがて、必殺技を派手にたたき込んだハウリンが、勝利者になった。 ギャラリーの盛り上がりは最高潮に達した。 まるでプロレスみたいだ、と菜々子は思った。 勝負を見せるのではなく、試合展開や凄みを見せるもの。 それは今の菜々子が求めるものではない。 「ここの人たちがおもしろいバトルをしてるからって、強いとは限らない。強さが伴わない魅せる戦いなんて、大道芸にもならないわ」 あまりに痛烈な菜々子の物言いに、花村は言葉を失った。 だが、代わりに言い返そうとする声が響いた。 「聞き捨てならないわねー」 にこやかに笑って、二人のテーブルのそばに立ったのは、女性だった。 長い黒髪に、はっとするほどの美貌。 肩の上にいるのは、さきほど観客たちを盛り上げていた、ドレス姿で戦うハウリンである。 「戦いは強く美しく。武装神姫はそうでなくちゃ」 美貌のマスターは、魅力的な微笑を浮かべながら言い切った。 菜々子は胸を突かれる。 彼女の姿に、一瞬、おあいお姉さまの姿がダブって見えた。 昔の桐島あおいは、こんな風に笑いながら、同じようなことを繰り返し菜々子に語ったものだった。 ただの感傷だ。 菜々子は首を横に振り、幻影を振り払う。 気が付くと、先ほどからのバトルで興味を引かれた神姫とそのマスターが勢ぞろいしている。 「みんな集まってるわ、花村くん」 黒髪の美少女マスターの声に、花村はほっとした顔で頷いた。 そして、菜々子の方に向き直り、こう言った。 「君がそこまで言うなら、実際にここの常連さんたちと戦ってごらんよ」 「え?」 「勝つためだけのバトルが本当に正しいのか否か、彼らを相手に試してみるといい」 「なんでわたしがそんな……」 「今の君は見苦しい。少し頭を冷やしてもらうといいよ」 花村の顔はいつになく真剣で、瞳は挑戦的な光を帯びている。 菜々子は悟る。 今日、花村が自分をここに連れてきたのは、このためだったのだ。 はじめから予定されていた策略。 エルゴの常連たちが相当な実力者であることは、先ほどのバトルを少し見ただけでもわかる。 つまり、ここの連中を使って、わたしに制裁を加えようと言うわけか。 しかし、菜々子は断る気がなかった。 花村がここまでして仕掛けた策略に対し、持ち前の負けん気が首をもたげたのだ。 「いいわ。やってやろうじゃない」 菜々子は吐き捨てるように花村に答え、立ち上がった。 次へ> Topに戻る>
https://w.atwiki.jp/iwarpg_wiki2/pages/838.html
迷路形式のダンジョン。上の層に戻ることはできず、またボスに挑んだら下の層へは進めないので注意が必要。 1層BOSS 名前 属性 Lv HP 攻撃力 防御力 ドロップ 特殊行動 備考 ミノタウロス 地 290 3200 ミノタウロスの皮 2層BOSS 名前 属性 Lv HP 攻撃力 防御力 ドロップ 特殊行動 備考 アリアウネ 闇 375 3800 アリアウネの糸 BOSSが死んだあとHP12の毒蜘蛛が現れる 3層BOSS 名前 属性 Lv HP 攻撃力 防御力 ドロップ 特殊行動 備考 テセウス 闇 500 13200 テセウスの魂 「冒険者離れてくれ」と死後に範囲即死スキル、直ぐ離れよう
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2817.html
SHINKI/NEAR TO YOU Phase02-2 からっと澄んだ晴天となった連休最終日。 摩耶野市センター地区に位置する神姫センターは大勢の観客で賑わっている。 シュンは人波をかき分けるようにエントランスホールを進みながら、なかば辟易としていた。。 「……こんなに人が多いなんてな。普段の何倍いるんだよ?」 いつもは整然としているエントランスホールが、今は人垣で埋め尽くされている。 客層もゴールデンウィークらしく、親子連れから高校生くらいのカップル、はたはお年寄りまでと様々だ。無論、この群衆全てがトーナメント大会の参加者という訳ではない。ほとんどは観客としてやってきた人たちなのだろうが……。 「シュン、ひょっとして緊張しているのですか?」 「まさか。武者震いするぜ――って、思ってたところだよ!」 ゼリスの問いかけに憮然して返す。 その強気な態度に満足したのか、ゼリスも得意げに胸を反らす。 「ならば結構。私たちの目的は、あくまでも優勝ですからね」 さらりと言ってのける。彼女にとってこの溢れんばかりの人波も、どこ吹く風といった様子だ。 ……けれどゼリスさん。今回の目的はあくまで武装パーツの実戦データだってことを忘れていませんか? 「データを集めるついでに、優勝してしまえばよいのでしょう? 簡単な話です」 ……ああそうですか。 まあ、確かにシュンたちは公式大会に参加するのは初めてだ。今までに体験したフリー対戦とは違い、参加者も実力者揃いに違いない。 そうした実力者を相手にして、僕とゼリスは一体どこまで渡り合えるのか? 正直、シュンもさっきから緊張と期待がシェイクされたような不思議な気分を味わっていた。 今の自分たちの力を試す意味でも、この大会が絶好の機会なのは間違いない。 「シュッちゃーん、こっちこっち~!」 雑踏に混じって、彼を呼ぶ声が耳に届く。シュンが振り向くと、群衆の合間から手を振る伊吹とワカナの姿があった。 「思ったよりも早かったな」 「うん、ばっちりよ。ぜっちゃんとワカナでしっかりチーム登録してきたからね」 神姫センターに着いてから、伊吹はトーナメント参加手続きをするために別行動を取っていたのだ。 彼女を加えて、シュンたち4人は連れだって歩く。 「ワカナさん、よろしくお願いします」 「オッケ~、ボクと一緒にガンバろうなのだ~」 伊吹の肩から飛び出す猫型MMSマオチャオ――ワカナと、ゼリスは互いに挨拶を交わす。 その様子に微笑を浮かべつつ、伊吹はワカナの頭をひと撫でしたあと、右手に巻いた腕時計で時間を確認する。 「さてっ、と……そろそろトーナメントの組み合わせが発表される時間みたいね」 伊吹を先頭にしてホール内を移動する。 エントランスホールの正面には、天井から吊るされた大型スクリーンモニターが設置されている。これからこのモニターにトーナメントの組み合わせが映し出されるのだ。 ホールに流されていた音楽がフッと途切れ、合わせて照明も暗くなる。 4人(正確には2人と2体)がモニターに注目する。 するとそれまで表示されていた新商品のプロモーション映像が切り替わり、神姫BMAのロゴマークが表示された。黒字に鮮やかな赤で印されるお馴染みのマーク。 それが消えると、続いてモニターには神姫バトルのフィールドが映し出された。 荒野を思わせる、夕日に照らされた岩と砂に覆われたバトルフィールド。 その岩陰のひとつから、藤色の鎧に身を包んだ凛々しい神姫が姿を表す。リペントモデルの侍型MMS紅緒だ。 紅緒は黒髪をなびかせながら地を蹴り、そびえる岩山を一足飛びに駆け上がる。 ――その姿を追いかけるように、岩肌に弾痕が刻まれる。 切り替わったカメラが、岩山の上を滑空する別の神姫を捉えていた。黒いメカニカルな翼をはためかせ空を舞う黒い神姫、リペントモデルのセイレーン型MMSエウクランテ。 藤色の紅緒が手にした薙刀を振りかぶり、跳躍。 対する黒いエウクランテは、両手に剣を構え迎え撃つ。 夕日をバックに二体の神姫が空中で激しく切り結ぶ―― そのシルエットを背景に、モニターに文字が浮かび上がった。 <武装神姫バトル MAYANO SPRING CUP> シュンはそこで大きく息をつき――ようやく自分が、呼吸も忘れるほどモニターの中で繰り広げられるバトルに見入っていたことに気がつく。 「すげえ……公式大会って、こんなにレベルが高いのか」 「……ふむ、確かに熟練者が多く参加しているようですね」 感嘆するシュンにゼリスも同意する。 そんなふたりに伊吹が呆れた目を向けた。 「当たり前でしょ。今のは昨日開催された、マヤノスプリングカップ決勝戦の映像だもの」 「へっ……決勝?」 「そうよ、ただし一般部門のね」 一般部門って何だ? シュンが尋ねると、伊吹はトーナメント大会についていろいろ説明してくれた。 それによるとゴールデンウィーク中に開催される公式トーナメント大会――通称マヤノスプリングカップは、高校生以上の〝一般部門〟と中学生以下の〝ジュニア部門〟に参加者を分けいるらしい。 ジュニア部門は5月5日の子どもの日。一般部門はその前日の5月4日と、開催日も分かれているそうだ。 「今日のトーナメントは子どもの日にちなんでの、言わばジュニアユーザーへのファンサービスみたいなものなのよ」 なるほど。確かに武装神姫バトルには年齢や性別によるハンデはないとされるが、実際はジュニア層には不利なことも多い。 まず神姫一体の価格が高性能PC並みなのだ。 まして本格的にバトルで上位を目指すなら、装備や周辺機器を揃えるのにますますお金がかかることになる。 そのバトルを行うための筐体だって有料だ。子どものお小遣いではなかなか厳しい。 だから武装神姫ユーザーは、全体の傾向として若年層の方がどうしてもプレイ人口も数が少なくなる。加えて年齢が低いほど経験も浅い場合がほとんどなので、当然ランキングにも差がついてしまう。 そうした対策のひとつが、このトーナメントのようなに小中学生ユーザーを対象にした公式大会なのだろう。 実力が近い者同士でバトルできるようする為の、運営からの配慮といったところか。 「だから今日のトーナメントは、今見た一般トーナメントほどハイレベルにはならないわ。どう? データ取りを兼ねた腕試しには、まさにもってこいでしょう?」 「確かにそういうことなら、こいつの実戦テストにも丁度いいな」 シュンは肩から下げたバックを叩く。そのなかには、先日テストしていたハンドメイド武装一式が入っている。 このところ調整が行き詰っていたのは、自宅でのテストでは必要なデータが不足していたからだ。 ならばこうして大会に出ることで、実戦データを集めて残りの調整を一気に終わらせてしまおう――というのがあの時伊吹からされた提案だった。 またこのトーナメントには実戦的なデータを収集できる他に、タッグバトル形式というメリットもある。 「安心して、シュっちゃん。もしもの時は、私とワカナがついてるからね!」 「ワカナたちはつよいんだよ~!」 伊吹とワカナは「ふふんっ」と息ぴったりに胸を張る。 「ああ、ふたりとも期待してるよ」 もし試作武装に不具合が起こり、ゼリスが戦闘に支障をきたしたとしても、タッグバトルなら仲間にフォローしてもらえるのだ。 その意味では、上位ランカーである伊吹とワカナはこれ以上ないほど頼もしいパートナーだろう。 「ワカナさんと私が組めば、恐れることなどありません。いわゆる"鬼に金棒"ってヤツですね」 自信ありげなゼリスに、ワカナもうんうん頷く。 目指すは優勝!――二人の神姫がハイタッチを交わす背後では、モニター画面にトーナメントの組み合わせが大きく映し出されていた。シュンたちの最初のバトルは、Aブロック第一回戦の第一試合。 シュンはあらためて、バックの中にある武装パーツについて考える。 ユウ特製のゼリス専用武装――天馬型オーラシオン。 肝心の製作者本人は、現地で調整を行うための準備もあり遅れて会場入りする予定だ。 まずは武装の調子を確かめながらトーナメントを勝ち進み、問題点が見つかった場合は合流した由宇が、その場で再調整を行なう手はずになっている。 (由宇が来る前に負けちゃいました……なんて、無様なオチを見せるわけにはいかないからな) そう考えながら、シュンは気を引き締める。 ――まずは一回戦突破だ。 ▲BACK///NEXT▼ 戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/130.html
そのに「回顧録・一」 僕がのティキを所有する事になってから、日はまだ浅い。 今僕と共にある武装神姫――ティキは、元々亡父の物。言わば形見だ。 つまり僕は自分の神姫と付き合っていく上で、ティキを一から育てると言うメリットを放棄させられたワケだ。 そして手探りで半ば完成されたティキというパーソナリティーを理解していくと言うデメリットだけを負わされた事になる。 それを少しでも克服したいと(愚かにも)思った僕は、夜中にただ一人で無き親父の書斎へと向かう。 ……冷静に考えれば、こんな考え方だから僕は振られたのだろうか? ちなみに、本来神姫はただ一人を『オーナー』と認識したら機能『停止』、観念的に言ってしまえば『死亡』するまで変更することが不可能なのだ。が、ティキの様な『オーナー』死亡の場合に限り、別オーナーへの再登録が認められる。 それまでの神姫のパーソナルをそのまま引き継ぐ為には、わざわざ必要書類をそろえて、郵送し、更にメーカーと再契約しなければならないけど。 それはさて置き。 親父はマメな人物でもあったから、もしかしたらPCに痕跡ぐらいは残ってるだろうとそう思ったのだ。 果たしてそこには『日記』と記されたフォルダが残されていた。 ……痕跡どころじゃねーよ。そのものだよ。 ともあれ、僕はそのファイルを開く。 ○月○日 この日俺はついに武装神姫に手を出してしまった。 こんな事家族に言ったらもしかしたら妻は離婚を言い出すかもしれない。 息子に言ったなら、俺は軽蔑され、冷たい視線を受ける事になるだろう。 でも、お義父さんの神姫を見ていたら、どうしようもなく、たまらなく羨ましくなったのだ。それはもう仕方が無い事なのだ。 俺は食事、団欒の後、なるべく自然に書斎へ戻ると、逸る心を抑えられずすぐさま神姫のパッケージに手をつけた。 MMS TYPE CAT『猫爪』。 俺は焦りながらも慎重に、とにかく家族に気付かれない様、細心の注意を払って開けてゆく。 そこには夢にまで見た神姫が、眠るようにいた。 俺は早速神姫を起動させる。 何かしら説明の様な事をきった後、彼女はおもむろに俺に言った。 「愛称と、オーナー呼称を登録してほしいですよぉ♪」 ……この子は何で歌うように喋るのか? お義父さんの所の娘達は普通に話していたのに??? 「どうしたのですかぁ?」 にっこりと笑って俺を見る。と言うよりそんなものを登録するという事実をすっかり忘れていた。 「……あーすまん。チョット待ってくれ。考える。」 「ハイですぅ♪」 目の前の神姫はそういうとその場でぺたりと座った。 あーかわいいなぁ。……いや、そうじゃない、考えよう。 どうせなら変わったのが良いな。でも愛称は変すぎても可哀想だ。と、俺が頭を捻っている間も彼女は俺をジッと見つめている。……愛らしいなあ。 はた、とそこで思いつく。 「オーナー呼称の方、先でも良いかな? 『旦那さん』と呼んでくれ」 「『旦那さん』ですねぇ♪ ……登録したですよぉ♪」 そういうと彼女は「旦那さん、旦那さんですぅ☆」と何度も言って机の上をピョンピョンと跳ね回った。 そんな彼女を見ていると微笑ましくなる。……正直に言えば、ニヤニヤしている自分を自覚する。 そんな彼女の様子を目で追いながら、俺は愛称を考えていた。 「ダメ大人じゃねーかよ!!」 僕はただただ、PCの前で突っ伏した。なんだか日記も妙に読まれる事を意識した書き方だし。 でも、それと同時に戦慄した事が一つ。 ……確実に僕にもこの親父の血が流れていると実感した事。 終える? / つづく!
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2641.html
『元気でやっているか? 風邪とかは引いてないか?』 「大丈夫、父さん。心配しすぎだよ」 帰ってきた後、夕飯の作り途中、家に電話がかかってきた。 それは久しぶりに父さんからだった。 月に一回ぐらいにこうやってかかってくる。心配性な父さんだ。 『いーや、高校生でも、螢斗はまだまだ子どもなんだ。息子を心配するのは父親として当然だぞ』 「ちゃんと、やってるよ。……そうそう、ついこの間から、長倉家にさ、武装神姫が住むことになったのだけど。父さんは許してくれる?」 『ああ、あの動く可愛い人形か。同僚の娘さんも持っているらしいからな。……父さんは別にいいと思うぞ』 「そう、よかった」 この家の、本来の家主に反対されたらどうしようかと思っていた。まあ、反対したとしても、無理矢理押し切る気でもいたのだけど。 『ちなみに、どういう子なんだい? 猫型とか犬型とかかい?』 「……詳しいね、父さん。しかも基準がペット方向のだし」 『ち、違うぞ! ただ、ちょっと、そういう先入観があるだけで。……詳しいのも、お客さんを色々見ていると、神姫を連れている子や、いい大人が年甲斐もなく愛でているのを見られるだけだぞ。本当だぞ!……父さんは変な目で見ているわけではないぞ!』 欲求不満なのか、我が父親は。 言わなくてもいいことをペラペラと喋る。 「わかった、わかった。そう言う事にしとくよ」 『そう言う事とはなんだ、そう言う事とは。信じてないだろ、父さんを』 「信じまーす」 『うぅ、まったく……ブツブツ……』 父さんも元気そうにやっているみたいだ。いつも通りの父さんがいて、ホッとしている。少しイジりすぎたかもしれないけど。 「神姫は山猫型、アーティル型の子なんだ。名前はシオンってつけてる」 『ふーん、アーティルタイプは熱血で元気な子らしいじゃないか。名前はシオン……シオン。もしかして……シオンを漢字で書いたら、“詩”と“音”って書くんじゃないか?』 「……うん」 父さんは一呼吸置いてから、また電話口から声が聞こえた。 息を飲む音も一緒に。 『……すまんな、一人にさせてしまっていて』 「なんで謝ってるの? 家を空けてるのはいつものことじゃない……」 父さんが突然謝り出した理由はなんとなくわかっている。 だけど僕は、はぐらかした。 『だがな、実際螢斗は寂しいんだろ? お前の母親“詩乃”と、詩乃の母さん、祖母の“海音”義母さん。わざわざ、文字をとってくる必要がない。螢斗自身はわかっているだろ?』 「違うってそういうのじゃない。ただの偶然だよ、偶然」 『しかしだな……』 そうだよね。父さんはそう思うよね。でも、あれは本当に偶然だった。 名前を考えたら自然に頭の中に浮かんできた。漢字名は後で気付いた。 ただ、それだけのこと。 『お前は詩乃が亡くなった時も、義母さんが亡くなった時も、号泣だったじゃないか。詩乃が亡くなった時は、三日三晩、小さいお前が俺の胸で泣いてたし。義母さんが亡くなった時は葬式の翌日、久しぶりに帰ってきて、布団を干す時にさ、おまえの枕がすごい濡れていたのを覚えてるぞ』 「……家族が亡くなったら、誰だって泣くさ」 余計なことばかり覚えてるんだから、父さんは。 僕が以外に涙脆いなんて知っているくせに。涙は枯れないものだから、どんどん溢れてくるものだから。 『無理をすれば、父さんは家に帰れることだって……』 「――それはやめてよ。父さんは結構偉い立場なんだからさ。社会人として責任が色々あるでしょ。……それにさ、今は……」 「螢斗さーん!……鍋が、鍋が吹きこぼれそうです!!」 廊下の奥、キッチンの方からシオンの危機感迫る声が聞こえ始めた。 「ちょっと待ってて、父さん。……コンロのスイッチを止める方に捻るんだ!! 身体全体で掴め!!」 「と、とりゃー!……やった! 治まりましたよ、螢斗さん!」 ふぅ、これでよし。一安心だ。 「よくやった! そのままにしといて!…………もしもし、父さん?」 『大変そうだ……な。電話越しに聞こえたぞ』 「料理の最中だったから。シオンにまかせてたからね」 『ははは、武装神姫の、あの小さい身体に料理番は荷が重そうだな』 「でも、よくやってくれてるよ。……あのさ、こうやってシオンと暮らしてるとさ、少し父さんの気持ちがわかるんだ」 『うん?』 「父親の気分っていうのかな。シオンは普通の神姫と少し違うところがあってさ、そういうのがあってもさ、それが可愛いっていうか。手のかかる子ほど可愛いというかさ」 『でも、お前はあまり手がかからなかったな。詩乃が亡くなってからとか、義母さんが亡くなって、ますますな』 「……えっと、そうだった?」 そんな風に意識したことはなかったような。一人暮らしをするって決めた時はしっかりしようと思ったけどさ。 『そうだったんだよ。……親が亡くなるなんて、子どもは暗くなるのが普通なんだが、お前は、率先的に義母さんの手伝いしてたらしいじゃないか。父さんは知ってるんだぞ』 「う、」 『同僚のお子さんなんか、母親がいてもなにも手伝わない事が多いらしい。お前の話をすると、絶対俺の周りが羨ましがるんだぞ。一人で偉すぎるってな。その度に父さんは鼻が高くなってしまうぞ』 「そ、そう」 職場では僕の事が周りに筒抜けらしい。僕自身は当然の事だと思うのだけど。 『お前が持ち主だったら、神姫のシオンが幸せだな。お前はしっかりしている。どんな子でも導いていけるさ。子どもは手が掛かろうが、手が掛かなかろうが、いずれは成長していくもんだ。人間だろうが神姫だろうが、それは同じだ』 「あ、……そうか……そういことか」 この前の君島さんの話、成長という意味はこういう事を指しているのか。 シオンだけではない。僕も成長する必要があるということかもしれない。でも、なにを……? 『ん、今度はどうした?』 「いや、なんでもない。そろそろ切らないとな、なんて」 『おお、そういえばそうだな。いつまでも、電話を占領するのも悪いし』 「……ほどほどにね。あと、父さん……」 『なんだ』 「いつも、ありがとうね。僕を心配してくれて」 『ッ!…………あったりめーだ、バカタレー。我が息子よ、またなー。……ッグス……ウウ」 ……プツ、ツーツーツー。 僕は受話器を置いた。 父さん、最後泣いてたし。涙脆いのは父さんの遺伝だな、絶対。 「螢斗さん、どうかしましたか」 「……え、どうしてそんなこと聞くの?」 リビングに戻ってみると、シオンがなぜか僕に訪ねてきた。 いや、電話してただけなのだけど。 「顔が嬉しそうですよ。電話の相手と、よほど楽しいお話をしたんですか?」 「ああ、そういうこと……うん、そうだよ。シオンのことをね、少々」 「えぇ!? 私ってやっぱり変ですか? そうですよね。戦えない神姫なんて変ですよね。自分でもそう思います」 「なに、勝手に勘違いしてるの!? 違うって!」 シオンを宥めるのに時間を使っていたら、すっかり鍋は定温にまで下がっていた。 ―――― 休日の日、天気は快晴。 朝の10時いつものゲームセンター前。 「よーし、皆のもの、全員いるかねー?」 「全員って……君島さん、あなたがみんなと初対面ですよね? まず、自己紹介してくださいよ」 「これは失敬。長倉君のアルバイトの上司、君島 縁だ。それ以上でも、それ以下でもない」 「……螢斗さん。君島さんって変な人ですね」 最後のポツリと感想を言ったのはミスズだ。 今この場には、僕とシオン、淳平とミスズ、君島さんだ。 淳平は絶対朝起きられないと思ったので、僕が家に電話して淳平の母親に頼み、ブン殴ってもらって起こしてあげた。 今日は残念なことに霧静さんはいない。 霧静さんは家の用事で今日は出られないとのこと。アリエもまだ神姫ショップの店番で忙しいらしいし。 休日はよく人が来ると言っていた。どっちにしろ、あの店長さんを見たら客は逃げると思うんだけどな。 それと、君島さんの神姫のリンレイも見当たらない。だけど、気配はしないけど絶対身近にいる。忍者みたいに姿を消せるみたいだから、油断はできない。 「はい、はい、はーい! お姉さん、質問でーす!」 淳平が、学校に教育実習生として来た先生に、質問を投げかける生徒みたいな構図が連想されるテンションで手を挙げている。 「はい、そこのキミ!……えっと、名は?」 「伊野坂 淳平。螢斗の親友でっす。この子はアーンヴァル型のミスズっす」 「じゃあ、改めて。……はい! 伊野坂君、なんだね?」 「姉御って呼んでいいっすか? ついでに彼氏はいますか?」 「……マスタァ~」 ああ、ミスズが凍えるような目で淳平を見始めた。よくあることだ。だけど、今日は止められそうにもない。 「うむ、許す。……彼氏がいるかどうかは……キミのご想像にまかせるとしよう」 「うぉー、ミステリアスな雰囲気っすね、さすがは姉御! 痺れるっす!」 キミたち、ホントに初対面なの!? 「はー、綺麗なお人ですね……」 シオンが君島さんに見惚れている。それでいて驚きの口調も出す。 ――いや、騙されるんじゃない。 確かに今日の君島さんは、いつもの、バイトの時の姿と違く見える。 君島さんの服装は黒のジャケット、中にシャツ。細い足にはデニムパンツ、靴はヒールと大人だからこそできる服装。 僕よりも幾分も長身でスタイルも良い。顔にはブルーグレーのサングラスをしていて、バイト中いつもぞんざいに結っている長い髪はツヤがあるように、綺麗に腰元まで流している。 道の通りを歩く十人中十人が、男女関係なく、かなりの確率で振り返るであろう容姿を今この人は表わしているからだ。 今も道行く人が何人か振り返っているのがわかる。 だけど……だけどだ。 僕は知っている。 この人は荒唐無稽なことを平気でやってのける。バイト中でも、数々の暴挙を引き起こしているのに客からも反感を受けず、仕事もクビにもされない超人だ。 実際に謎だらけの人なのだけど……なぜか、僕にとって信頼できる人でもある。 ……不本意だけど。 「――拙者は主殿の神姫リンレイでござります。よろしくいたく候」 「あれ? いつからそこにいたんですか! さっきまでいなかった筈なのに……」 ミスズが口に手をやって驚愕している。 君島さんの肩からさっきまでいなかったリンレイがいつのまにかいたからだ。 本当、いなかった筈なのにどこから来てるのかな。 「すっげー! 忍者だ、忍者も出た。姉御もめっちゃ美人だし、なんでバイトの先輩で、こんな美人がいるって言ってくれなかったんだよ!? これから、螢斗のコンビニに毎日通う事にするぜ!」 「迷惑だよ……ハァ……」 ガクガクと僕の首を揺らす淳平。そして、来て早々疲れている僕。 なんでこの人といると、こんなに精神的にも疲れるんだろう。 ……いや、淳平と併せてるせいだ。絶対そうだ。 「えー、今日はお日柄もよく、シオン君の矯正バトル日和になったわけなのだが」 「そんなことより、いいから、授業とやらを始めましょうよ」 「ふぅ、まったく、ゆとりというものを知らんなキミは。昔は……」 「はいはい、もう入りましょう」 もう付き合ってられない。 シオンの為を思って呼んだのだけど、人選を間違えたのかな僕は。 「綺麗な方なのに、面白いお人ですね」 シオンは本気でそう思っているみたい。 面白いは褒め言葉なのか? いや、シオンにとっては悪口じゃないだろう。 純真すぎるのも問題だな。 「悲しいな、悲しいよ。……さて、リンレイ、伊野坂君とミスズ君も行くぞ」 「承知でござります」 「へへ、俺もお供しまっすー!」 「マスタァー!! あとで覚えていてください……ぐぎぎ……」 このメンバーで本当に大丈夫なのだろうか。 ―――― 「ふむふむ、ゲーセンの筐体はこうなっていて……ほう、このくらい迫力で……ステージもなかなかリアル……うーむ」 君島さんが感嘆の声を呟く。他の対戦者、神姫たちが実際にバトルしてる筐体の画面をゆっくりと眺めている。 「君島さん、そろそろ、シオンのバトル恐怖症を治す方法を教えてくださいよ」 「まあ、待て。……んーと…………」 筐体から離れ、君島さんはサングラスを外してポケットに差してから、周りを見渡している。 「主殿、あそこにでござります」 肩に乗っかっているリンレイがある一角を指差す。 なんだろうか? 僕はてっきり、君島さんとリンレイがバトルで直接教えてくれると思っていたのだけど。 「おっ…………そこのチンピラ! ちょっとこっちに来い!」 えっ! ちょっと、何やってるの? リンレイが指差す方向、壁を背にして立っていた、いかにもワルそうな男。 君島さんはその人を見つけるや否や、突然挑発し始めた。 「……あ~? おいおい、いきなりなんだ、ネーちゃん。オレのことをチンピラっつってさ、舐めてんのか、あぁん!!」 (こ、怖!) 君島さんと違う種類の、それでいて同じようなサングラスをかけている男性がこっちに向かって来た。 ジャラジャラと首にネックレスをいくつもかけていて、格好も着崩している風貌だ。 「キミみたいな、チンピラ風情がゲーセンにいると、ここの空気が汚れる。さっさと、出て行ってくれたまえ」 「ちょ、ちょっと。君島さん! いきなりどうしたんですか!?」 「そうっすよ、姉御。危ないっすよ」 「……君島さん、謝ったほうがいいです!」 僕もミスズも、さすがに淳平もたじろいでいる。 僕も怖いが、怖くて震えているシオンは胸ポケットに身体を潜らせる。 とにかく、君島さんを謝らせないと。周りの客も空気も凍りついているじゃないか。 「ひでぇな、ネーちゃん。俺も神姫バトルを楽しみたい一市民なんだぜ、そこは許せよ。お前もそう思うだろ、なぁ?」 チンピラさんが自分の神姫に話しかけた。 見ればその男性の肩、膝に手を置いていて行儀よく神姫が座っている。 左目の方に眼帯をしているのにその上からオーナーと同じようにサングラスを掛けている。 「…………」 なにも喋らない。 軍帽を被っていてその下から、アーティル型のボディよりも薄いピンク色の髪の毛が見える。 あれは……武装神姫、戦車型のムルメルティアだ。 それより、なんで、サングラスを掛けている率が多いんだ。流行っているのか? 「こちらはそんなものは知らん。さっさと消えてくれたまえ」 しかし、どうしたんだ、君島さんは。なにかこういう人に恨みでもあるのか。 普段よりも気性が荒すぎる。 「おーおー、怖え~。美人なネーちゃんなのにな、もったいない。……はぁーあ、ムカつくぜ」 「で、どうするのだ? 出ていくのか? 出ていかないのか?」 「いやだ、ね……どうしても出ていかせたいっつうなら、やっぱここはコレだろ?」 クイッと指を筐体に指す。神姫バトルでけりを付けるってことなのか。 「被害者な俺自身がふざけた気分になっちまうが、警察沙汰にする気もないんでな。ここは神姫バトルで手を打つってぇーのはどうだい?」 「ふむ。わかった、よかろう」 ふぅ、よかった。君島さんと忍者神姫のリンレイなら、神姫バトルで負けるイメージはないからな。 これで安心でき―― 「――ただし、やるのはこの子だ」 「えっ!…………うぇ!?」 君島さんに突然腕を引き寄せられた。 僕の目の前に厳つい男性のチンピラさんが。 「あ? このチビがか……てめーはやんねえのか?」 「あいにくと、私は武装神姫を持っていない」 「ええっ!! リンレイが――……ムググ……」 「リンレイがいるじゃないですか」と言おうとしたら、口を手で塞がれた。 淳平とミスズにも、何も言うなと目で黙らしている。 なんで、どうして? 目線を動かしても、君島さんの身辺どこにもさっきまでいたリンレイの姿が見当たらない。また姿を消しているのか。 (いいから、言うとおりに) 耳元、小声でそう言われた。 一体何を考えているんだこの人は。 「はぁ? てめーはなんでここにいるんだよ!?……はぁ、まあいい。そこのチビが代わりにやるってことだろ? 俺は別にいいぜ。そのチビの神姫が勝ったら俺は素直に出ていくさ。ただし、負けたら……」 首を掻っ切るジェスチャーをする向こうのチンピラさん。 え、本気で? 人間を神姫バトルで……。 「ふん、冗談だ……ただ、俺のダチが裏でやばい仕事してて、そこで急遽人手が必要なんだと。俺は面倒でやりたくないんだが……」 「それを手伝えっていうことですか」 「そうだ。そっちが負けたら、それが罰ゲームっつうことにしよう。俺は喧嘩売られた側だぜ? それくらいの権利はあんだろ。もしもだ、そういう仕事でとちったら社会的にな……わかんだろ?」 「……最悪陽の目をもう浴びれなくなるってこと……です……か?」 「賢いチビだ。まあ、そういうこったな」 そうだよね。 もちろん、僕たちが負けても君島さんが代わりにするんだよね。 そうなんだよね? 僕は君島さんを伺ってみる。 (キミがやるんだ) 目がそう語っている。 うっそ、なんで!? 「ちょっ、ちょっと、待っててください!! 君島さん、こっちに」 「……ふむ、よかろう」 今度は僕の方が君島さんを引っ張っていく。 ゲームセンターの隅の方、目のつかない方に連れていく。 「あのアマは、いつもあんな感じなのか?」 「さ、さぁー、姉御はさっき初めて会いましたのでよくは……あはは……早く戻ってこいよ~」 「なにかあれば、マスターは私が守ります。ヌヌヌ……」 その場にはイラついたチンピラさんと気まずそうな淳平、睨みつけるミスズが取り残されてしまった。 ごめん、すぐ戻るから。 前へ 次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2651.html
「ホントにやるのー。戦えるようになったんだろうねー?」 「はい! 大丈夫です」 暇を見つけてもらって、今日はゲームセンターに霧静さんとアリエに来てもらった。 イスカと戦う前にアリエと戦っておく。 あの熱を持った赤い大剣状態をちゃんと克服できているかどうかのチェックをしておかないと安心はできないからだ。 「ごめんね、この前来れなくて。シオンちゃんの勝ったバトルを見てみたかったのだけど、どうしても用事が外せなくて」 「ううん、そんなことないって。そう思ってくれてるだけで嬉しいよ」 霧静さんが申し訳なさそうにしている。 真剣にシオンを思ってくれている。 そんな優しさがありがたい。 「バトルの前に霧静さんとアリエにお願いがあるんだ」 普通にバトルするだけじゃなくて、これを言っておかないといけない。 「うん、なにかな?」 「あの『ヒート・カートリッジ』だったかな? アレを使ってバトルしてほしいんだけど」 「えー、アレかー。制限時間があるけどいいかなー?」 使うの制限があるのか。それは誤算だけどまあいいだろう。 勝ち負けが問題じゃないし、アレを出されてちゃんと立っていられるのかが問題なんだ。 「うん、それでもいい。でも、本気でお願いするよ」 「もちろんだよー。あははー」 何が楽しいのかアリエは笑う。 いっつも笑顔だね、アリエは。 「嬉しそうだね。アリエ」 オーナーの霧静さんもアリエが上機嫌なのが不思議らしいが、 「うん、そだよー。前は変に終わっちゃったからねー。もう一回、私の闘争本能に火をつけたんだからさー、生きて帰れると思わないでね――」 「……うん。でも、もうバトルの準備しましょうね」 「――私はまだ力を隠し持っているんだから、それを出すのはシオンの実力次第だー。この前より強くなっているのだとしたら、私も全力を持ってお相手していただくよー。私の前で5分間立っていられたら褒美を……って、あれ~~?」 霧静さんはアリエが調子にノる前に、早口で何か言っているアリエを手で持って、向こうのブースに連れて行ってしまった。 僕はそれを横目で見送った後、シオンを見てみる。 「アリエさんに勝てるでしょうか? 自信がないです」 「僕としては赤い大剣を見て、シオンが立っていられるかどうか心配だよ」 「それは……多分、大丈夫ですよ。はい」 どこから来るのか、小さい身体に自信が溢れている。 前回ではトラウマを引き起こしたのに、なぜかそっちの方は心配してないのかシオンにそんな素振りはない。 僕の杞憂だったのだろうか。 ……いや、まだ安心はできない。 やるのと仮想でイメージするのとはわけが違うんだから。 ―――― 前回と同じように廃墟街のステージだ。 今度は最初から隠れて進むとか不意をつく作戦とかではない。 真っ向からぶつかれるように広い場所で両者は対面させている。 「よっし、じゃ行くぞー!」 「お願いします!」 アリエは前と同じ兵隊のようなアーマーをつけて、エレメンティアを両手で持ち構えている。 対するシオンは両手にぺネトレートクロ―・烈、そしてファイティングポーズを取り、武道家のように気迫を発し続けていつでも動ける態勢。 「『エレメンティア・ヒートカートリッジ』セット! いくよー!」 エレメンティアに赤いカードを差し込むと、たちまち刀身は真っ赤になる。 剣の周りはゆらゆらと蜃気楼現象のように空気が歪んで見える。 あれが発動した。 それで、肝心のシオンはどんな様子だ? 「……すぅ……はぁ……」 呼吸をしている。 いや、それは当り前なのだけどあれは深呼吸に近い。 顔は真っ直ぐ向き、目はちゃんとあの赤い大剣を見据えている。 「へー、あれから随分と頑張ってきたんだねー。前と違って闘気ってゆーのかな? そういうのが違うねー」 「はい、ありがとうございます」 本当にあれすらも克服しているらしい。 すごい成長ぶりだ。 あの時の戦いからシオンはリミッターが外れたのか? いやはや、凄いとしか言いようがない。 「ふ、それじゃ、いくよーん。今度は本気で立ち向かうから来なさーい」 「行きます!」 そして両者はぶつかり合った。 「せりゃー!!」 「はぁー!!」 シオンは駆けて右のナックルで殴りかかる、アリエは上げた大剣を振り下ろした。 ガンっ! 打ち合った瞬間、周りの地面、場の建物が振動し出した。 ギギギッとナックル対大剣の押し合いが続くが、アリエは振り下ろしと両手で、と諸々の力はあっちの方が上だ。 そうなるとシオンが押され気味になるのだが、シオンは左腕を肩まで上げ、左のナックルもエレメンティアに叩きつける。 もう一回ガンッと響くと、両手と両手。それでやっと両者は拮抗しだした。 シオンは下から上なのになんで互角なんだろうか? ……あ、そうか。 普通、ゼルノグラードは火器型特性だから、大剣は使いづらいものなんだ。 武装神姫で得手不得手があるはずなんだから、あの差もわかる気がする。 でも、ゼルノグラードが大剣を使って強いという事はアリエ自身かなりの練習量をしてきたんだろう。それが試合からはわかる。 「ぬぅーー!」 「くぅーー!」 二人とも押し合いから武器を引き離さず、そのままの状態が続くが。 シュ~ッと。 煙がペネトレート・烈の先から出てくる 刃が熱を持っているから、ナックルが焼きついてきてるんだ。 「はあはあ、ここまで持ちこたえるとはやるねー。シーちゃん」 「はあはあ、アリエさんもものすごいです。大剣をそんなにまで使いこなして」 「努力の結晶ってやつだねー。でも、この大剣はそんじょそこらの大剣とはわけが違うのさー。不思議に思わないかなー? このエレメンティアにはトリガーがあるのになんで引かないのかってさー」 あの大剣にはトリガーがある。 だがそれを使ってないということ。 話しで聞いたゲームでは確かあれは…………マズイ! 『シオン、後退して!』 「もう遅いよー! 燃えろ、ドッカーン!」 僕がシオンに命令してエレメンティアからナックルを離そうとして逃げる瞬間、アリエがそう言うと大剣の引き金を引いた。 擬音を口から出した時、剣からも擬音の通り剣先から爆発が起きた。 「くっ!?」 シオンが灰色の煙に包まれた。 爆発の衝撃はどうなった。 ――シオンは無事か。 「へー、これを耐えきるかー。さすが熱血型」 間合いを離したアリエが口元は笑っているが、本気で驚いている。 「……ガードできてなかったら危なかったです。それと熱血型ではなくて私は山猫型です……はぁはぁ」 アリエが言ったことに律義に訂正させてからも、シオンは息を荒くさせている。 どうやらシオンは腕をとっさに交差させて、身を守ったらしい。 その証拠に両腕は煤こけたみたいに、黒くなっている。 だけど、使っていたナックルのぺネトレート・烈はどこかに吹っ飛んでいったのか、シオンの手元にはなくなっていた。武器はあれだけではないけど、なくなったのは痛いな。 「今から説明するとねー、この剣はカートリッジに入ったエネルギーを剣に流し込むと“属性”を付加することができるんだー。 そしてそのエネルギーを使い切る前にトリガーを引くとそのエネルギーを爆発させることが出来るんだー。それがこのエレメンティアの力さね」 アリエは自慢げにそう話している。 エレメンティアについて話してても陽気さが表れている。というか話したくてうずうずしてたみたいだ。 自慢したくてたまらなかったといった感じに見える。 だけど、その話を聞くとファンタジーにあるみたいな魔力を使う魔法剣みたいだ、と僕は思った。 さすがはあの店長さん。武装神姫にそんな力を与えるとは侮れないお人だ。 でも、シオンはその爆発のエネルギーをガードしきった。 すごい威力なはずなのに、ガードしきれるとはシオンってそんなに頑丈だったのか。知らなかった。 「でも、その大剣の事をそんなに話していいんですか。一応私は今、敵なんですけど」 「あははー。この力って有限だからねー。あんま万能ではないんよー。これって長所であり短所だからさー、黙っててもアドバンテージにすらならないんだよねー」 特殊能力を持った剣ではあるけど、欠点も多くあるらしい。 火器型であるのだから、大剣使いとしての能力がつきずらいんだな。 「毎日素振りを千回し続けた結果、火器型でありながら私は大剣を少しは使いこなせるようになったのさー」 「……それ程の回数。素振りをするとは、すごいですね」 「嘘だよーん」 「そんな!?」 変なコントが起きているが、このままアリエとの話しが引き延ばせたら……。 話が伸びているおかげで、シオンの息切れも治まってきている。 霧静さんが気付いていたらアウトだけど、どうだろうか。 「そのまま使うだけでは相手の方は倒せないんですか?」 「いや、ダメだねー。なんていうのかな、やっぱ私って現実問題、火器型ゼルノグラードじゃん? 大剣の特性値ってあんまないんよー。最初の頃の使いづらさっていったらもう死にたくなるねー」 もう少し。 「それだけで死んではダメですよ。ちゃんと前を向いて生きなくてはいけません」 「いや、例え話しっしょー。本気にしないでよーもう。面白いなー、シーちゃんはー。あははー」 よしそこで、フェリスファングを取り出して―― 「あー!! いけないなー。そんなもの取りだしたらー」 「く、」 カンッカラカラと。 フェリスガンが手から弾き飛ばされ、後ろに滑って行った。 なんでだ? アリエは近接武器のエレメンティアしか使わないはずなのに。 「言ってなかったっけー? 重・軽火器の類は一切使えないってー。でもさ武装の種類には投擲武装っていうものがあるのを忘れてはいけないよねー」 左手を前に出したダーツの矢を投げたような態勢のアリエ。 そしてシオンの後ろにはフェリスガンと一本の『フルストゥ・クレイン』が。 くそ、投擲武装を持っている可能性もあったのに、あの間延びした態度ですっかり油断していた。 戦闘中、アリエはもうちょっと緊張感持った喋り方をしてほしいよな。どうして、二人は気にしないのか。不思議に思うが。 ……そんなことより、結構絶対絶命の危機的状況だよな、これは。 フェリスガンはシオンの後ろに、ぺネトレートクロー・烈もどこかにいった。 どうするか? 「こっちの隙をうかがっていたんだねー。まあ、私もリミちんに言われなかったら引っかかっていたけどー、あははー」 霧静さんにはやっぱり気付かれてたみたいだ。 霧静さんもかなりの実力者。いや、なんで僕がこんな偉そうなんだよ。僕より武装神姫のオーナー歴は先輩なんだから当たり前じゃないか。 アホなこと考えてないで、実際どうしようか? あちらはまだアレを持ってそうだからな。 背面キャノンのバリスティックブレイズは却下だ。動きが大きいから遠距離からでしか通用しないし、その前にやられてしまう。 それ以外ならこっちの武器はあとナイフしか…………あ、それ以外もあった。 『シオン、僕の言うとおりにして作戦は………で……………あれを』 「え、……あ……はい。わかりました」 作戦を伝え終わると、シオンは僕の言ったことが伝わったようで、頷いてくれた。 「まだ、なにか企んでるー? でももう無駄だよー。ほら」 手元には青いカートリッジが転送されていた。 別の属性付加のパーツか。 アリエはそれをエレメンティアに差し込もうとしている。 でもそれが来るのは――こっちは予測済みだ。 「ふっ!」 瞬間で身体を前傾にさせて駆けだすシオン。 駆けだすと同時に手に持つは一振りのナイフ。 それを先ほどのアリエと同じように投擲。 エレメンティアに入れようとしていた青い付加パーツに向かって真っ直ぐ。 あのパーツは差し込むのに若干の猶予があるからそのタイミングを待っていたんだ。 「アタっ!」 パーツに当たれば良いと思ったが、手元にも当たったのか、手を押さえ悶え始めたアリエ。 これは好機だ、いけシオン。 ……あれだ。あれを出すんだ。 「いっけぇ! てりゃー!」 近くで沈み込んでから渾身の――右アッパー。 格闘技を題材にした小説を見て、編み出したこの技。 名付けるとしたら『ライジング・アッパー』 これを使わせるとは、アリエ恐るべしだ。 この技は膝ジョイントをバネにしてから、腰・肩・手に力を移動させ神姫の拳に全威力を乗せた必殺のアッパー。 本来はナックルの武器系統を装備して、その上から殴るのが本来の使い方なのだけど威力は十二分にあったみたいだ。 それがアリエの顎にクリーンヒット。 「グハッ」 浮き上がりその後倒れたアリエの傍に瞬時に寄り、近くにあったナイフを拾う。 ナイフが近くにあるのも計算通りだ、本当に。 それをアリエの首元にシオンはスッと軽く押し当てた。 神姫のノーマルな拳ぐらいでへばるような武装神姫たちじゃないだろうからだ。 「どうです? 降参しますか?」 「いたぁー。手加減してよ、もぅー。降参でーす」 やった、終わった。僕もなんか疲れたなー。 ―――― 「痛ったー、なんでただの拳だけであんな痛いのさー」 バトルが終わると霧静さんとその肩に乗ってアリエも向こうから来た。 アリエは顎を手に当てて、顔をしかめている。 「す、すいません。アリエさん」 「謝る必要はないよ、シオン。これは真剣なバトルだったんだからさ」 「そうよシオンちゃん。最後の最後で油断してたアリエも私も悪いから」 「へーい、すんませーん」 オーナーの霧静さんにそう言われて、すごすごとアリエは黙ったようだ。 実際にバーチャルじゃなかったら、どのくらいの威力があったんだろうか。 アマチュアのボクサーぐらいのパンチ力があったらいいな。僕たちが必死に考えた必殺技だったんだから。 「でも、本当に見違えちゃったな。シオンちゃんすごく強くなったね」 「ありがとうございます。螢斗さんとの鍛錬のおかげで戦えるようになりました」 いや、ちょっとしたきっかけで出来るようになったんだから、そんなに持ち上げることはないのでは、とシオンに言おうとしたのだけど場の雰囲気が勝手に進み言い出しづらくなってしまった。 「はー、前にもこんな風に負けたことあったよねー。あの頃はエレメンティアをろくに扱えてない若い私だったねー、うん」 「若いって……そんなに経ってないからね。前に使った戦法があるけど今日は準備不足だったみたい」 霧静さんもアリエも自分の戦い方を考えて、勝ったり負けたりしてきてるみたいだ。 強く思えても、色々な積み重ねが必要なんだな。 と、僕が思ってたら、アリエがふっと思い出したように手を叩く。 「そうそう。とりあえずさー、これで赤い大剣の状態は克服できてたから、これで因縁の相手と戦えるんだねー。私にも勝ったんだから、必ず勝ってよねー」 「お姉ちゃんと……」 アリエが言ったことを聞くとシオンは顔が暗くなる。 僕が無理矢理決めてしまったけど、シオンにはやはり辛いことだったのだろうか。 ――いや、そうだよね。 実の姉ではないとしても、元は家族の一人だったんだから、家族と戦いたいなんて誰も思わないよ。 「怖い?」 姉と戦わせるなんて僕はなんてひどい奴なんだろうか。 戦えるようにはなったんだから、シオンが望むならこのままでも……。 そう思い、シオンの目を見つめ言葉を発しようとした。 けど。 「大丈夫ですよ。私は螢斗さんの物ですから。螢斗さんの思うがままに」 「シオン……」 それを聞いたら、僕の涙腺が緩くなってしまったが……気合いで我慢した。そんなところを霧静さんやアリエに見られたくなかったからだ。 僕を安心させるよう少し演技が入ったような口調。 自分にも言い聞かせるみたいなそんな感じ。 もう、戦う事から逃げることはないと思える瞳をしている。 姉と戦う決意も一緒にそこから感じられた。 「うわー。ケートんの物とか言ってるよー。大胆発言だねー」 「長倉くんはシオンちゃんにすごい思われてるんだね。……それに比べてこっちは……はぁ」 「こっち見てため息とか、ひっどぉー! それが自分の神姫に対する態度かー」 僕たちの横では、別の戦いが勃発しようとしていた。 それでも二人はすごく仲が良さそうに見える。 神姫と人には色々な関係があるんだなと僕は場違いにも思ってしまった。 前へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/182.html
-”A”- 私はアーンヴァルタイプのMMS。 愛称はアルファ。 マスターが最初に購入したMMSだから。 ”A”を指すコード。 闘技場へはマスターのセカンドカーで行き来する。 マスターが運転し、他の神姫たちは後部シート。 セカンドシートは私の定位置だ。 帰路。 戦績が悪いときは家までの一時、この位置は地獄に感じる。 戦績が良いときは天国だ。 運転中、マスターが私たちに言葉をかけることは無い。 それでも 機嫌の良いマスターの横顔を眺めていられる。 他の神姫たちの目を気にせずに。 ガレージに車を入れるとマスターはさっさと二階の居住区画へと階段をあがっていく。 他の神姫たちはこのガレージが兵舎となる。 指揮官機である私だけが二階に入ることを許されていた。 「今日はよくやった。 各自装備の手入れがすんだらゆっくり休め。 後はまかせたぞ、ブラボー。」 今日の戦闘データのやりとりを終えると私は二階へと向かう。 人間用の階段も飛行ユニットを装備したアーンヴァルタイプの私には苦にならない。 「失礼します!」 ドアにあけられたMMS用の出入り口 (元はネコ用だと聞いた)の前で声をあげてから5秒後に入室する。 マスターが入室を拒むときは何か返事があるからだ。 返事がないということは入室を許可されたと判断するのが常だった。 マスターはさっそくネットワーク端末に向かい、今日のニュースに目を通されている。 机の角へと飛び上がって、直立不動の姿勢をとる。 「戦闘結果のご報告にあがりました」 「ん。データ送っといてくれ」 ちらりと私を一瞥して視線をモニターへ戻す。 「マスター…」 私の言葉をさえぎるように小さくため息をつくマスター。 「ワイヤレスは情報漏れの危険性が高い。か? ったく・・・」 ネットワーク端末につないだ接続用ケーブル、 その先を指でつまむマスター。 私はこれ以上ないくらい素早い動きで 自分の端子口をあける。 「接続準備完了!」 ──!! ズブリと一気に差し込まれる端子。 その衝撃が全身をかける。 カチリと私の奥に端子がおさまる。 声が出そうになる。 マスターはモニターへ視線を戻してネットワーク端末を操作しはじめる。 端子をくわえこんだ私の部分が熱くなる。 んぅぅ・・・ 有線接続にどうしようもない昂りを感じる。 マスターの横顔。 マスターがネットワーク端末を操作する動作。 それを見て机の端で身悶えする自分。 …最低だ。 頭の中であらん限りの罵倒を自分に浴びせる。 でも コアが熱くなるのがとまらない。 マスター!マスター!マスター! ……… …… … 「…だなぁ。まぁ、こんなもんか…」 ブッ! モニターを眺めながら片手で乱暴に端子を引き抜くマスター。 「ひぁ」 思わず小さな声が漏れた。 本棚の隅。 何かの部品を梱包していた気泡緩衝シート (プチプチのアレ)が私のベッドだ。 ここからだと部屋が見渡せる。 警備には最良のポジション。 そして、マスターの寝顔も。 武装神姫のAIは成長する。 それが武装神姫の魅力であり強さであると言う。 そしてAIの成長に失敗したものは捨てられる。 … AM6:45 そっと、マスターの枕元へ降り立つ。 寝息でマスターが熟睡していることを確認する。 「…マスター…」 大きなその頬へそっと自分の頬を寄せる。 温かい。 不自然なその格好のままでも 苦痛を感じないこの身体に感謝する。 AM6:59 そっと身を離して目覚まし時計の鳴るのを待つ。 ”piririri!!!!!” 「起床時間です!おはようございます!マスター!」 挨拶が返ってくるかどうかは… 残念ながら確率が悪い。 「ガラクタども!お前らはマスターを愛しているかっ?!」 配下の神姫を前にして今日も私は闘技場の格納庫で叫ぶ。 「相手のガラクタどもを残らずファックしてやれ!総員出撃!!」 私は戦い続ける。 オイルと硝煙にまみれて。 失敗したと言われぬように。 捨てられぬように。 愛しているから。 end-